市街地近郊で「宅地並み」に課税されている畑を相続したとき、相続税の評価で周辺宅地に比準した額にさらに0.8を乗じてよいのか、そもそも「宅地介在畑」とは何の概念なのか。固定資産税と相続税の二つの制度を分けて、条文に沿って一問一答で整理します。
倍率表の畑欄が「周比準」であれば、宅地比準方式で求めた価額(造成費控除後の額)に0.8を乗じる取扱いは、財産評価基本通達に沿った正しい評価方法と考えられます。むしろ0.8を乗じないと過大評価となるおそれがあります。
これは「周比準」が市街地周辺農地を示す記号であることによります。相続税では農地を純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地の4つに区分しており(財産評価基本通達34)、倍率表の田・畑欄の記号がこれに対応していると考えられます。「純」は純農地、「中」は中間農地(いずれも倍率方式。財産評価基本通達37・38)、「比準」「市比準」は市街地農地、そして「周比準」は市街地周辺農地を意味すると整理されます(国税庁「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」)。
市街地周辺農地の価額は、「その農地が市街地農地であるとした場合の価額の100分の80に相当する金額」によって評価するとされています(財産評価基本通達39)。この「市街地農地であるとした場合の価額」とは宅地比準方式、すなわち「宅地であるとした場合の1平方メートル当たり価額から1平方メートル当たり宅地造成費を控除した金額に地積を乗じた額」を指します(財産評価基本通達40)。
別の話です。造成費の控除と0.8を乗じる手続は、性質の異なる二段階の調整です。
造成費の控除は、農地を宅地として使うために現実に必要となる整地・土盛り等の費用を差し引くものです(財産評価基本通達40)。一方の0.8(20%減)は、市街地周辺農地が宅地への転用を見込める地域内にあるものの、現実にはまだ宅地への転用許可を受けていない状態にあることを評価上考慮した調整です(財産評価基本通達39、国税庁タックスアンサーNo.4623)。
「宅地介在畑」「介在農地(宅地等介在農地)」は、相続税の側の用語ではなく固定資産税の側の区分です。そして市町村が恣意的に作った概念ではなく、地方税法・固定資産評価基準(総務大臣告示)・農地法に基づく全国共通の制度と整理できると考えられます。
まず相続税の財産評価基本通達には「宅地介在畑」「介在農地」という用語・定義は置かれていません。相続税はあくまで前述の4区分(純・中間・市街地周辺・市街地)で評価します(財産評価基本通達34、36〜36-4、37〜40)。
これに対し「宅地介在畑(介在田・介在畑)」は固定資産税の土地評価で使われる区分です。固定資産税の評価方法は総務大臣が定めて告示する「固定資産評価基準」によることとされ(地方税法388条1項)、市町村長はこの基準によって価格を決定しなければならないとされています(地方税法403条1項)。土地の地目は登記簿上の地目ではなく、賦課期日である1月1日現在の現況によって認定されます(現況主義。地方税法341条・359条、固定資産評価基準)。
固定資産評価基準において農地は、概ね次のように区分されます。このうち「宅地等介在農地」は、農地法4条1項・5条1項の転用許可を受けた農地や市街化区域内で届出により転用可能な農地など、農地法上の規制を外れて宅地化が確実と認められる農地を指し、宅地としての価額から造成費相当額を控除する「宅地並み」評価が行われます(農地法4条・5条)。
| 固定資産税の農地区分 | 主な内容 | 評価の考え方 |
|---|---|---|
| 一般農地 | 市街化区域外などの通常の農地 | 農地としての評価(倍率等) |
| 市街化区域農地 | 市街化区域内、届出で宅地転用が可能 | 宅地比準(造成費控除) |
| 宅地等介在農地 (宅地介在畑・介在田) | 転用許可を受けた等、宅地化が確実な農地 | 宅地比準(宅地並み・造成費控除) |
固定資産税の区分をそのまま相続税に流用するのではなく、相続税は相続税の区分で判定し直すのが適切と考えられます。両者は別の法体系に基づく別建ての分類だからです。
固定資産税の区分(一般農地・市街化区域農地・宅地等介在農地)と、相続税の区分(純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地。財産評価基本通達34)は、どちらも「宅地比準・造成費控除」という共通の発想を使う場面はあるものの、用語や区分体系は一致しません。
実務的な対応関係としては、固定資産税で「介在農地(宅地並み課税)」とされている畑は宅地化が進んだ土地であることが多いため、相続税評価上は市街地農地または市街地周辺農地に該当することが多いと考えられます。もっとも、これは個別地の位置や都市計画上の区域区分によって変わり得るため、相続税評価では改めて倍率表の記号(純・中・周比準・比準/市比準)と財産評価基本通達の4区分で判定し直すことが適切と考えられます。